偏光板とは

「偏光」は自然現象です。おそらくその現象は地球誕生のころ、太陽の光が地表に届きはじめたころから起きていたはずです。人類がその現象を発見したのは今から200年ほど前ですが、おどろくことに昆虫は何万年も前から空の偏光パターンを利用して方角を知ることができたということです。

偏光板のはたらき

光は波の性質をもっていると言われます。しかし、それを実感するのはむずかしいのではないでしょうか。「偏光マジック ニコルのかべぬけ」では、のり巻きを作るときに使う「巻きす」と波の形を印刷した「波カード」を使って「偏光板は特定の方向に振動している光だけを通過させる」ことを解説しています。 波カードはこの工作キットに付属しています。巻きすは付属していません。

 

科学工作キット「偏光マジック ニコルのかべぬけ」に付属の波カード(名刺サイズ)

上の画像では巻きすを「偏光板」に、波カードを「縦方向に振動する光」に見立てています。

上の画像は縦向きに並んでいる巻きすの細い棒の間に、縦向きに振動している光が入っていくところです。

巻きすの細い棒の向きと光の振動方向が同じ場合、光は巻きす(偏光板)を通り抜けることができます。

巻きすの棒の向きと光の振動方向がことなる場合、光は巻きす(偏光板)を通り抜けることができません。


マジックのたねあかし

これが偏光板です。紙のように薄いプラスチックのシートなので「偏光フィルム」とも呼ばれています。


当社で扱っている偏光板は薄いグレーで、1枚だけでは向こう側が透けて見えています。

ところが2枚の偏光板を重ねると、偏光板の向きによっては向こう側が見えなくなります。
これが「偏光マジック ニコルのかべぬけ」のたねあかしになります。



クロスニコル

上の図はあくまでもイメージですが、
A 偏光軸がタテ(縦方向に振動している光だけを通す)の偏光板、
B 偏光軸がヨコ(横方向に振動している光だけを通す)の偏光板です。

偏光軸が直交する(直角に交わる)偏光板2枚を重ねると、光をまったく通さなくなるので、向こう側が見えなくなります。この状態をクロスニコルといいます。

 

旋光性(光学活性)

鉱物の結晶やプラスチック製樹脂あるいはブドウ糖・果糖などの物質には入射した光の振動方向を変える性質を持つものがあります。このような性質は「旋光性」あるいは「光学活性」と呼ばれています。

水晶などの結晶や砂糖水など旋光性のある物質を2枚の偏光板(クロスニコル)で挟むと、光源側の偏光板を通り抜けた光は物質の中を通過するとき振動の方向が徐々に変わり(偏光面が回転し)、観察者側の偏光板を通して見ても完全に暗くはなりません。どの程度回転するかは、光の色(波長)、物質の種類、濃度、厚さによって変わります。旋光性を持った物質をクロスニコルで観察する方法は、鉱物顕微鏡による鉱物の鑑定や果物の糖度の測定などに利用されています。

 

鉱物顕微鏡では光源側の偏光板を「偏光子」、観察者側の偏光板を「検光子」と呼んでいます。

2枚の偏光板(クロスニコル)の間にプラスチック製のスプーンを入れたところ。

材質、厚さ、物質に加わった力の大きさによって、模様のパターンがことなるため、樹脂成型品の検査にも利用されています。これを光弾性試験といいます。

水晶球を2枚の偏光板(クロスニコル)の間に入れると、水晶球の方向によっては上の画像のような虹色の同心円が見えることがあります。この模様はガラス玉では絶対に見えないため、水晶球の真贋(しんがん)判定にも利用できます。

偏光軸の見つけ方

工作キットに付属の偏光板を1枚使います。

洗面器に水を入れて窓辺に置いてみましょう

肉眼で見たときは、上の画像のように水の表面に外の景色が映り込んでいます。

 

偏光板を通して水の表面を見たとき、反射光が消えるように偏光板を回してみてください。

 

洗面器の水の表面の反射光が消えたとき、偏光板は水平方向に振動する光をさえぎったことになります。この場合、縦方向に振動する光は偏光板を通過するので、縦の方向を偏光板の「偏光軸」あるいは「透過軸」と呼びます。

カメラマンが湖や川を撮影するとき、水面のキラキラを抑えるために使用するPLフィルターには偏光板が使われています。