余談

光とはなにか
「Newton(ニュートン)」という科学雑誌があります。創刊は1981年。最近は能登半島地震やChatGPTなどタイムリーなテーマでも特集を組んでいますが、「光とはなにか」という普遍的な問題は過去に何度もこの雑誌で取り上げられています。

そもそも光は「波」なのか「粒子」なのか。朝永振一郎氏らとともにノーベル物理学賞を受賞したリチャード・フィリップス・ファインマン氏は「光と物質のふしぎな理論」(岩波書店)の中で「光は粒子から成る」と言いつつ「波と粒子の二重性」という記述もみつかります。ニュートンが活躍していたころから科学者たちを虜(とりこ)にしてきた光は電磁波とも呼ばれ、色のちがいは波長のちがいだと学校でも習います。少なくとも偏光板のはたらきを理解するには光を波と考えなければならない・・・波と考えた方が都合がよいことがわかります。

偏光板という、いまでは容易に入手できる道具を使って光の秘密の一部でも体験していただければ、と思って商品化したのが「偏光マジック ニコルのかべぬけ」です。付属の説明書では書ききれなかったことを少しご紹介します。


右回り、左回り
偏光板とは」のページで旋光性について述べましたが、さらにくわしく調べると、光の振動する向きが右回りになるのか、左回りなのか、物質によって異なることがわかります。旋光性には右回転、左回転があるということです。なぜ物質によって回転する向きが異なるのか、もはや初等中等教育の範囲を超え、かなり専門的な話になりますが、興味のある方は調べてみましょう。

 

本物ですか? その水晶球
偏光軸が直交する2枚の偏光板(クロスニコル)で水晶球を挟むと、虹色の同心円が見えます。ガラス玉では見えません。これを簡単に確かめることのできる観察器があります。


ネコポスで送れる水晶球観察器

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観察する際には光源が必要です。いろいろ試した結果、「電球形蛍光灯」がもっとも適しているようです。白色発光ダイオードでは、ぼんやりとした同心円しか見えないのはなぜでしょう?
LEDのメーカーの方にも、ぜひ一度おためしいただきたいと思います。


金属では偏光は起きない?
「偏光マジック ニコルのかべぬけ」の説明書「7.偏光板の向き(偏光軸)の見つけ方」の中に「金属以外の光沢のあるもの」という記述があるように、反射による偏光は非金属の物資の表面でしか観察できません。なぜ金属の表面では偏光が起きないのか。金属が導体であることと関係がありそうですが、かなり専門的な話になるようです。「光(可視光)は電磁波の一種である」ということを頭の片隅において、この工作キットに付属の偏光板を使って身の回りをよく観察してみましょう。キッチンのステンレスシンク、マンホールのフタ、アルミホイル、ピカピカの10円玉はどうでしょう?

3Dメガネ
映画館で3D映画を観るとき、入り口で持ち帰り可能なサングラスのようなものをもらったことがあります。ブームが去ったのか、最近は見かけませんが、この3Dメガネは偏光板と「波長板」を貼り合わせたものです。このメガネは前述の「水晶球の観察」にも使えます。もし3Dメガネをお持ちの方はぜひおためしください。

甲虫と偏光板
3Dメガネに使われている偏光板+波長板は「円偏光板」と呼ばれています。この円偏光板を通して甲虫を観察すると、円偏光の向きによって見え方が変わることがあるそうです。なぜ甲虫はそのような進化をとげたのでしょう。不思議としかいいようがありません。これも、興味のある方はぜひ確かめてください。